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第15号

1998年04月10日発行

信頼の回復
- 予算特別委員会総括質問要旨 -

京都府議会議員西田昌司

 私は、安心して暮らせる京都府づくりのために、社会に対する信頼の回復と伝統を守りつつも時代に適した社会システムの構築が、一番肝要であると考えています。 私は現在の大不況の原因は、バブル崩壊後の需要調整であると思っています。ただ、山高ければ谷探しという言葉があるように、バブルの時期に膨れ上がりましたから、その谷も大変深く長かったのです。その為に日本の経済システムを根本から構造改革すべきだと、叫ばれるようになりました。その結果、日本的経営が否定されてしまったのです。日本的経営とは、終身雇用や協力会社・家族的経営に代表される「長期的な信頼関係を基板とする」経営の安定が最大の特徴であります。反省しなければならない点も多いのですが、根本からだめだというのでは何の解決にもなりません。

 こうしたことから働いているものは、何時自分が首を切られるかわからないという不安を持ちます。お金も使わずに貯めることに必死になります。また、中小企業の経営者にとっても、いつ系列からはずれるかわからないという仕事の不安がありますから、設備投資に回せない。銀行も貸しても回収できないのではと、貸さなくなる。貯金者も銀行に預けても大丈夫なのかと不安になり、箪笥預金に回してしまう。何か悪い方に循環している。この結果不況が長引く。これでは構造不況ではなく、一面で「構造改革不況」ではないかと思っております。
 ではどうすればいいのでしょう。私は、日本的経営のよさをもう一度見直すなど、急激な改革をやめ、もう少し冷静な目で判断していかなければならないと思っています。「長期的な視点から、雇用と仕事を守る」という、安定と信頼の回復が第一に必要だと思っております。社会の秩序と皆さんの信頼が回復して初めて、消費や投資が回復し、景気の回復が実現できると、このように思っております。そして、これが府民の安心・安全な暮らしと社会を築く基本だと思っております。

 ところで、「公共事業をやめて減税を」という意見も聞きますが、所得税減税は箪笥預金という形で、今の状況では効果が出にくいという面があります。また消費減税では、消費税率のアップの際の駆け込み需要と反対に、減税までの消費の手控えという状況が考えられます。結局、景気に刺激を与えることなく、財政赤字が増えるだけで、的外れの論議だといわねばなりません。
 まず早急に手をつけねばならないのは、企業の雇用秩序を乱す急激なリストラと金融機関の貸し渋りなどの問題です。自由民主党でも昨年末から貸し渋り対策本部を設け、私も相談員として多くの方の相談を受けましたが、この不況で土地の値段が下がり中小企業の方の信用保証能力や担保能力が低下し、お金を貸してもらえないという相談を多く受けました。先の府議会でも、一般質問で提言しましたが、信用保証協会が中小企業に対する保証枠を拡大すること、無担保無保証人保証の充実を図り、中小企業の借り入れ枠を増やすことなどの政策か緊急に必要で重要だと考えております。
 また、長期的に見ますと大企業が、下請けの中小企業を切り捨てるリストラは、一見効率化を図っているように見えますが、自分の首を絞めているのと同じで、日本の工業生産全体の生産性を自ら落としていることにもなります。中小企業総合センターの経営・技術指導や中小企業進行公社の仕事の斡旋など具体的で今必要な手だてを打つことだと考え、附に対しまして強力な働きかけをしております。

 次に、福祉も安心な府づくりには、重要な柱です。高齢者福祉は新ゴールドプラン等により徐々に向上してきました。しかし現実には、特別養護老人ホームに入ってしまうと、家族が誰も見舞いにこないとか、お葬式にも顔を出さないという話を視察に訪れますと良く見聞きします。結局体のいい姥捨て山のようなことも実際にはあります。本来、家族や家庭を守るためにできた施設が、皮肉な結果をもたらせることにもなっています。また一方で、生涯のある人を抱えている家庭の場合には、家族の絆が非常に強いことを肌で感じることが多くあります。僅かな補助の中で、家族の絆を守り励まし合い頑張っておられる姿をよく見ております。親の立場にしますと、自分が生きている間は何とかしよう、だけど私が死んだらという不安の中で、日々子供に接しているわけです。
 私は、常々福祉の基本は多者よりも弱者の救済にあると思っております。つまり、数は少ないかもしれないが一番困っている人にこそ、必要な手を差し伸べることが、基本であろうと思っております。こうした政策を充実することは、福祉という観点からだけでなく、地域や共同体を守る上からも重要な視点であります。自分が住んでいる社会が、弱者を大切に守り育てる社会であるという思いや経験は、とりもなおさず、自分の周りの人々や社会に対する信頼を生み育てることになります。この社会への信頼は、また家族や家庭の安定と信頼無くしてはあり得ません。こういう意味からも、家庭や家族を守るという観点から福祉を考えていくべきだと思っております。
 以上述べましたように安心安全な京都を築くには、私は信頼の創造と回復が何より重要だと思っております。この信頼の創造こそ、教育の重要な使命であると思っております。未来を託せる信頼のおける人間の育成こそが、教育の最大の責務であると思うのです。それでは、人間としての信頼の源はどのようにして作られるのだろうと考えますと、やはり知育・徳育・体育のなかでも徳育が今日的にも大きな課題であるといえます。徳育とは、何だろうと考えますと、字の通り人間にとっての徳、つまり人が人として生きていく上での価値を学んでいくことだと考えます。
 じゃ、人間にとって何が価値のある大切なことなんだろう。私は、人のために身を尽くす、自分の利益だけではなく社会や公共のために身を尽くせる、そういった人間になるように学ぶこと、そういう価値観を持った人間を育てることではないかと思います。これは、いつの時代も、どこの国も変わらない不変の教育の目的であろうと思っています。
 日本では、こうしたことが家族との生活の中で、米作りを通して培われてきました。米作りは、村人総出で協力し合って、互いに力を合わせなければ、立派なお米はできません。自分が力を出し協力することで、村の利益にもなり、自分の利益にもつながる。このように、共同体の皆の利益と個人の利益が共に一致することの大切さとすばらしさを、米作りを通して文化として私たちは培ってきたと思います。
 ところが、現在の社会では、こうした地域や公共ということよりも、個人や個性ということを随分重視します。私のように公益や公共ということを言いますと、戦前の滅私奉公や封建的な人間と短絡して考え、議論を封殺する風潮もあります。私は、個人と公共が天秤にかけられ、個人の利益が追求されるのがおかしい。個人の利益がまずありきで、公共の利益より優先する考え方が少し違うのではないかと言っているのです。公共の利益に反するような個の利益追求はおかしいのであって、共にこれらを守る考え方や追求の仕方をしなければならないと考えております。先に言いましたように、日本では昔からこのような考え方は、人として当然のことと受け取ってきました。この私たちの考え方のよさを、もっと大切にしようといいたいのです。この考え方は、もの作りにも言えることです。

 よく日本とアメリカでは、ものづくりへの考え方の違いがあると言われます。日本の場合は、良いものを作ってその結果儲かれば良いという考え方をします。そのためには、協力して頑張ろうという、米作りの伝統に根ざした考え方があります。アメリカの場合には、まず儲かる品物を作る、儲かるものを売る。そのためには独創的なアイデアで、競争して勝っていくという考え方です。これは、どちらが良い悪いの問題ではなく、互いの文化や伝統の違いといえます。この互いのよさや違いを認め合うことが、真の国際化につながっていくと思います。
 しかし、昨今の改革騒ぎでは、こうした互いの考え方の違いや文化や伝統の違いを認めない、特に日本の文化や伝統が、非常に遅れているというように、全面的に否定する風潮があるように思います。このような自己否定につながる考え方が、信頼の喪失の根本的な原因につながっていくように思います。人を信頼する・社会を信頼する前提である自己の信頼を否定するのですから、それこそ、自分を見失ってしまい信頼の社会が作れないのも当然だと思います。私は、安心・安全な京都府をつくるために、こうした社会風潮を正していく、日本のよき伝統を守り育てていくという声が上がってこなければだめだと思っております。
 最近、新聞やテレビでは、景気が悪いからまず改革だというようなことばかりが言われています。しかし、急激な改革は、逆に景気の失速の原因ともなりかねません。政治に携わる者は、心してかからねばならないことですが、日本の本来のよき伝統や文化を守っていくための仕組みを新たに築き上げていく努力が必要だと考えます。人の信頼が回復でき、秩序が回復でき景気が回復する。私はこのような「言葉」を訴えていきたいと考えています。

ロマンチック・ダンサー
前野幸男さん
昭和6年 南区唐橋 血液型:O型

 「私たちがダンスを覚えた頃はやはり不良やったね。世間からはやっぱり違う目で見られた時代でした。今では、ダンスを楽しんだり、また皆さんに教える機会を得るのが一番の生きがいです。」

 昌友会主催の「第1回春のダンスパーティ」に先立ち、まったくの初心者、西田昌司府会議員をはじめ15名もの昌友会員にステップのイロハから御教授いただいた前野幸男さんを取材させていただきました。


 名曲は残る
 私らの青年時代はええ曲が多かったね。ダンスよりも先に素晴らしい曲に惚れたもんです。映画音楽もものすごく好きやったね。「第三の男」、「ビギン・ザ・ビギン」、「枯葉」、「セ・シボン」、「ツー・ヤング」、「ラ・クンパルシータ」、名曲は残っているし、今の曲でもいい曲は残ります。部屋は今でもダンスのええ曲でいっぱいです。


 青年時代
 40 数年もの前、「鶴清」が進駐軍の保養所になっていて、そこで始めてダンスの素晴らしさを知りました。そうやね私らがダンスを始めた自分、ダンスをしているのは男が殆どやったね。そらジャズを聴いたり、映画に凝ったり、ダンスをしたり、ビリヤードもしたけど、やっぱり、そんなんやっている者は世間から不良扱いされたね。そやさかい私も不良ですわ。その頃京都の大学の軽音楽クラブでも盛んにダンスパーティを催ししていてね。今こそダンスをする人は圧倒的に女性が多いけど、そら、その時、ダンスのパートナーを探すのは大変なことでしたよ。女性の取り合いで、随分振られました。それが私の青春時代やね。


 妻も知らぬダンス狂時代
 そんなことで結婚するとき、妻の両親の心象を考えてピタッとダンスはやめました。そして仕事一本でした。また、ダンスを始めるまでの30年間ほど、仕事仲間は無論、妻ですら私がダンスを踊れるなんて知りませんでしたね。


 再び踊るきっかけ
 私のお客さんで女性の社長さんが居られます。今ダンスを習っているけどと言うお話から、それではお教えしましょうと言うことで始まりました。統治は4個所も受け持ち、それからもう15年になりますが、今でも西京極で教えていますよ。ようやく2年半前から妻と一緒に踊れるようになりました。

 ダンスは見も心も躍る
 ダンスに歳は関係ありません。そやから絶対相手の女性の歳なんか聞いたらあきません。私は今もボランティアでダンスを教えていますが、皆「ここのダンス教室の曲はええね。」といってくれます。いろんな曲があるけど、その曲のイメージを心の中で膨らませて踊ることが大切やね。ワルツなら花から花へチョウチョが飛んで行く気持ちになる。若い頃の曲では思い出がよみがえる。そんな曲でダンスをしたら、体も心も踊るわけ、中でも私はラテンが好きでチャチャやキューバルンバは体が浮いてくるようやね。

 男性よ老けるな
 今この歳でダンスができる事は最高の幸せやね。音楽を聴きながらリズムに合わせて体を動かしてみる、これは老人ボケの予防にもなりますね。ダンスを始めてから随分若返った方が多いですよ。女性は特にそうですね。どうしても男は照れくさがりで、ほんとはやってみたいけれど、習ってみるチャンスが少ないからね。大勢で一緒にするといいかも知れませんね。女性は一人でも習いに来ますしね。腹が据わっていますよ。男性は歳をとると外に出て何かしようというと尻込みをしてしまう。奥さんがダンスでも習ってみようと言っても反対する。それでも女性は習いに来ますが、やはりご主人の理解が大切やね。一度奥さんがダンス教室にご主人を連れてこられると自分の妻の美しさに喜んで夫婦でダンスを始められる方が多いです。

 踊る幸せを贈る
 今のダンスはスポーツダンスやから、子育ての終わった女性や無論男性も健康のたいめに始めて欲しいね。私の目標は、そんな方に一人でも多くダンスの面白さを知ってもらうことです。初心者の方なら絶対にダンスを楽しく教える自信がありますよ。歳を重ねると女性でも自分の美しさに気づかない方が多い。女性が常に美しく自分を見せることに気を遣っていると、ご主人は決して悪い気はしません。家庭も円満と言う訳です。ただ上手になっても楽しいダンスを絶対に忘れないで欲しいね。あくまでも自分のダンスを楽しむということやね。

昌友会主催 第1回春のダンスパーティ

 去る3月21日、昌友会主催の「第1回春のダンスパーティ」がオーシャン会館において百五十余名の参加者を得て開催されました。生バンドの演奏、カラオケの披露、ゲームも交えて楽しいダンスパーティでした。ご参加いただいた皆さんは、ダンス衣装に身を包み、しばし時のたつのを忘れ音楽と一つになって踊っておられました。ダンスは自分が自分を主役にする不思議で楽しいもの。昌友会のメンバーもダンスの持つ楽しさに巡り会ったようです。西尾康孝開催委員長は、ダンスのステップ一つすら知らなかったが我々が今回、盛会裏に催せた事に「次回の予定は早くなりそうやな。」と檄を飛ばしておりました。
(文:編集室)

地域で頑張っています
九条少年柔剣道愛好会
会長 辻 和雄

去る3月23日、全国少年柔道大会京都予選会で九条愛好会が優勝しました。5月5日東京・講堂館での大会で京都の代表としてがんばってきます。

九条署の道場ではちびっ子達が元気一パイ、がんばっています。それは九条少年柔剣道愛好会の活動の場です。日本古来の武道であります柔道・剣道を習うことで、今一番世間でもとめられている、礼儀・お行儀・明るく健全な心・健康な体をそなえた少年少女を一人でも多く育てたく、顧問の西田昌司さん始め、南区内の大勢のお父さんお母さんのお力をかりて活動をしています。おかげさまで柔剣道の交流の場では愛好会の評判はなかなかのものです。ちびっ子やわらチャンやチビッコ剣士の練習の指導は九条警察署の署長さん始め、たくさんのお巡りさんのご理解ご協力のもと行っています。どなたも有段者ばかりです。夜昼なしの大変なお仕事ですが、私達の活動にご賛同いただき、勤務のあい間を縫って道場で子供達と共に汗をかいてもらっています。


 昨今毎日のように、新聞・テレビ等で少年たちの非行問題がトップニュースとして報道されています。大変な世の中になりました。まことに憂うべき事態です。このようなときこそ、私たちの活動の柔道・剣道を通じて少年たちが、あやまった道に進まぬよう、微力ですが、少しでも貢献できるよう頑張って行きたいと思います。区内の皆さん、ご興味のある方は子供さん共々、一度見に来て下さい。月曜日と木曜日が柔道です。火曜日と金曜日が剣道です。共に夕方5時30 分より九条署4階の道場で練習をしています。たくさんのお越しをお持ちしています。

瓦の独り言

羅城門の瓦

 アメリカ人が「国民の服」として誇るのに、「ブルー・ジーンズ」がありますが、我が国でもこれに匹敵する衣服があったのです。

 「紺のもんぺ」です。いまはほとんど見かけなくなりましたが、藍染めの紺のもんぺは最良の農作業衣だったのです。防虫効果はあるし、マムシなどのヘビは藍染めの紺の生地を嫌ったいわれています。
 この日本伝統染色技術である藍染めの原料となる藍は、全国各地で栽培されていましたが、南区においてもかつて東九条村付近を中心に室町時代から栽培されていました。江戸時代の木綿の着物の普及に伴い、「洛南の藍」として「洛中の藍染屋」に珍重されていました。藍の値段も良く、換金作物として村人の生活を潤していましたし、時の江戸幕府も抜け目なく、洛南の藍に着目し、特別に藍年貢として課税していました。明治の初期には京都府紀伊郡東九条村には10軒の大きな藍農家がありました。当時の京都の染織業界は、幕末の激動から、東京への遷都をへてかなり低迷はしていましたが、それでも日本の染織業界のリーダでした。明治5年の調査では11,000件の染織業者の中で100軒弱の藍染めの専業者があったと報告されています。当時、京都の染織業界では材料をほとんど地方に頼っていましたが、唯一、藍だけは地元で材料が調達できていました。しかしながら、明治の文明開化とともにインディゴビューアとよばれる合成藍が輸入されてきました。これを契機に東九条村付近では藍の栽培が消滅し、農家も藍に変わる九条葱、海老芋などの換金農作物へ転作していったのです。
 明治以前の藍の栽培は、京都の染織業界のキーポイントであり、当時のファッション産業を支えていたといっても言い過ぎではないでしょう。現在、南区を見渡せば、世界のブランドとして通じる下着メーカーがあり、十条通にはプリントなどの染色工場が、京都駅付近にはアパレルメーカーがあります。これらの繊維関連企業は南区が全国に誇れる企業であり、育てて行った土壌は明治以前の洛南の藍栽培にさかのぼるのではないかと、羅城門の瓦は一人でつぶやいています。



編集後記
「Show you」では、地域でご活躍しておられる方々をご紹介させていただきます。情報をお寄せください。お待ちしております。
松本 秀次

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