感染者が増加しているのは何故か?
参議院決算委員会で麻生財務大臣に質問(4月7日)
3月末に「緊急事態宣言」がようやく終わったと思っていたら、今度は「まん延防止等重点措置」の発令です。多くの国民が何かチグハグな印象をお持ちでしょう。毎日マスコミが今日の感染者数を発表しています。これが増えれば、昨日より何人多いと注意を呼びかけ、少なくなれば、まだまだ油断は禁物と言い、国民は気の休まる時がありません。しかし、こうした報道に本当に意味があるのでしょうか?
昨年、新型コロナウィルスの感染が報じられた頃には、PCR検査をするキットも限られておりました。発熱などの症状があった人が保健所などに相談をしても、限られた人しかPCR検査を受けることはできませんでした。
ところが、今年になってからは民間のPCR検査が広がっています。病院に行かずとも安い金額で手軽に検査を受けることができるのです。私も何度か利用していますが、これは党大会などの大きなイベントがある時などに、念のために検査をするためです。私は勿論、陰性でしたが、中には陽性と診断された方もいるでしょう。すると、今度は保健所などに連絡して行政によるPCR検査を受けることになります。そこで陽性と診断された時、感染者としてカウントされ、その数が毎日報道されているのです。つまり、以前より圧倒的に大勢の人がPCR検査を受けているのです。検査を受けている人が圧倒的に増えているのですから、感染者数が増加するのは当然なのです。
感染者の大半が無症状若しくは軽症
マスコミの感染者報道によると、毎日の陽性者数の大半は、無症状か軽症で感染経路も不明なのです。濃厚接触者にPCR検査をして陽性になれば、無症状でも陽性者が増えることになりますが、その場合は感染経路ははっきりしているのです。勿論、濃厚接触がなくても発症して検査陽性と判定される人もおられます。その一方で、感染経路不明の陽性者が増えているのは、民間のPCR検査により、自主的に、念のため受けた人がかなりいるということです。
そのことを私は厚労省に指摘をし、どれくらいの民間のPCR検査が実際に行われているのかを確認しました。しかし、彼らも実際にどれくらいの数の民間のPCR検査が行われているのか分からないのです。この様に、感染経路不明の無症状者が増えている原因は、恐らく念のための民間のPCR検査が増えているからでしょう。つまり、毎日の感染者数の増減には統計学的な意味は無いということです。
マスコミは感染者数の増減報道だけでなく、なぜ無症状や軽症の感染者が増えているのかその原因を調査し、報じるべきです。そうしたことを一切せずに、単なる増減数だけを報じているのでは、市民にいたずらに不安感を煽ることになってしまいます。
むしろ、不安感を煽り、行動自粛をさせることが感染者数の減少につながると思っているのではないでしょうか。もしそうなら、これはマスコミのおごりです。正しい情報を市民に伝えることがマスコミの使命のはずです。不安を煽り意味のない行動自粛を要請するよりも、正しい感染対策をする方が遥かに効果があるはずです。
問題は病床使用率
令和3年自衛隊入隊入校激励会に出席いたしました
病床使用率とは、各都道府県が新型コロナウイルス患者向けに準備した病床に占める入院患者の割合のことです。政府の新型コロナ感染症対策分科会は各地の感染状況の深刻さを4段階のステージで示しており、どのステージにあるかを判断する指標の一つとして病床使用率を用いています。
感染者数を医療提供体制の逼迫度合いを検証するには、全入院患者と重症患者それぞれの病床使用率が判断材料となります。感染者が急増していることを示す「ステージ3」は病床使用率20%以上、爆発的な感染拡大が起きていることを示す「ステージ4」は同50%以上としており、緊急事態宣言は最も深刻な「ステージ4」相当で検討することになっています。
つまり、病床使用率が5割を超えてしまっては、感染者数が幾何級数的に拡大した場合、入院できない人が一挙に増え医療崩壊につながるというのが最大の問題なのです。そこで、病床使用率を増やさないために感染者数を増やさないように行動自粛が求められるわけです。感染拡大を防ぐためには、これも仕方がないことでしょう。
しかし、病床使用率を下げるためには、病床数を増やすことが重要です。もともと日本は、先進国の中でも医療が充実していると評価されていた国です。ところが、その医療施設の大半が民間病院なのです。他国では、医療施設はその大半が公のものであり、医療従事者も事実上公務員です。そのため、行政の判断により必要に応じて病床や医療従事者の確保がしやすい環境にあるのです。ところが日本では、民間病院が主軸になっているため、そうした確保が十分にできていないのが現実なのです。
そこで、東京都や大阪府の知事は、盛んに行動自粛を呼びかけ、不要不急の外出自粛とか、夜の会食は控えてなど、市民に行動自粛を求めて感染拡大を防ごうとしています。もちろん、そうした市民の協力も必要でしょうが、まず行政としてやらねばならないのは、病床の確保ではないでしょうか。少なくとも、国公立病院は率先して病床確保に協力すべきです。
また医師会も、全国の民間病院に呼びかけをして、病床確保の協力を要請すべきです。しかし、知事も医師会も危機感を煽り市民に行動自粛を呼びかけるばかりで、病床確保に努力をしている様子が伺えません。緊急事態宣言や蔓延防止措置を政府に要請する以前に、病床確保のためのあらゆる措置を政府に要求するのが筋ではないでしょうか。また政府も、国民に行動自粛を呼びかけるだけではなく、病床確保のためのあらゆる政策を総動員すべきなのです。
3密防止の意味
3密(3つの密)とは、密閉、密集、密接から名づけられた言葉です。この3つの「密」は、日本における新型コロナウイルスの集団感染が起こった場所の共通点を探した際に、この3つの密が共通となっているということが分かり、新型コロナウイルス感染症を避けるためにもこの3密を控えるようにすることを求められています。
これが意味するところは、会話等による飛沫感染の防止、飛沫よりもっと小さなエアロゾルによる感染の防止、さらにはウィルスの付着したものに触れることによる感染の防止を行うための指標です。
飛沫感染の防止のためには、マスクの着用が求められます。エアロゾルによる感染の防止のためには換気が大切です。ウィルスの付着による感染防止のためには、手洗いが重要です。ところが、3密防止が単なるスローガンになり、何のために行っているかが国民に示されないと無用の行動自粛を求めることになります。
例えば、マスクの着用です。室内で会話が予想されるような状態にある時は、マスクの着用は必然でしょう。しかし、通勤の時のように、屋外で会話をせず歩いているだけなら、マスクの着用は意味がありません。飛沫が出ないばかりか、エアロゾルも空気中に拡散するため感染のリスクは非常に小さいからです。基本的に会話をせずに屋外で行動する場合にはマスクの着用は意味がありません。
無意味な自粛要請より科学的根拠に基づく行動規範
コロナ禍における緊急融資について商工会議所等、地元からの声をきかせていただきました
飲食店は、コロナの感染源で営業すること自体が許されないような扱いを受けています。アルコールの提供や営業時間も極端に制限が求められています。しかし、飛沫とエアロゾル、更に接触を避けることを重点に考えるなら、違うアプローチもあるはずです。
先ず飛沫防止です。お店によっては距離を開けたりアクリル板を設置したりしているようですが、何よりも大切なのは、会話する際には必ず会食用のマスクをつけることでしょう。
その上で、室内の換気を行い、手洗いや手指の消毒をしておけば感染リスクはかなり低くなるはずです。前号で私が示した会食用のマスクやうちわを使うことにより、飛沫やエアロゾルはかなり抑えられますから簡易なアクリル板の設置よりも効果があります。最近は、オゾンなどによる空気清浄器も有効性があると言われていますが、政府がしっかりと調査して認証すべきです。
また、人との距離を開けるというソーシャルディスタンスも会話やくしゃみなどによる飛沫感染防止のためです。マスクを着用していれば、飛沫感染のリスクはかなり低くなり、屋外であればエアロゾル感染のリスクはないでしょう。従って、プロ野球の様に屋外でマスク着用を義務づけているなら、観客数を減らす意味はほとんどないでしょう。更に、演劇やコンサートなどの屋外のイベントも同じことが言えます。屋内のイベントでも、マスクをして換気を充分行っていれば、感染リスクはかなり低くなるでしょう。
要するに、3密防止というスローガンの下、何でも行動自粛を要請するのではなく、「飛沫」、「エアロゾル」、「接触」、この3つのリスクを具体的に防ぐ手段を示すことが大切なのです。
国民に意味のない行動自粛を要請してストレスばかり与えるのではなく、科学的根拠に基づいた行動規範を示すことのが重要なのです。
都道府県間の移動制限禁止の是非
東京都の小池知事等は、都道府県間の移動制限を訴え、連休中の旅行も自粛してほしいと呼びかけています。確かに、東京や大阪などの感染拡大している地域に他の地域から旅行に行くことはリスクがあるでしょう。
しかし、東京都、大阪府、愛知県等では移動制限後にむしろ感染状況が悪化したのです。これは封鎖された感染拡大域内で外出することで、これまで以上に域内での感染確率が高くなってしまったのです。
こうした事実を踏まえて考えれば、PCR検査をして陰性だった方などは、東京や大阪などの感染拡大地域で我慢しているよりも、感染者の少ない地域でしばらくのんびり過ごしている方が、感染確率が下がると言うことです。一律に連休中の旅行を自粛するのではなく、こうした科学的根拠に基づいた行動規範を示すべきなのです。
ワクチン接種までの我慢
日本でもようやく、高齢者の方々からワクチン接種が始まりました。夏までには高齢者の大半の方には接種ができるようになるでしょう。このワクチンを打てば重症化リスクがかなり軽減されます。感染してもに普通の風邪並みのリスクになると言うことです。
このところ、大阪の感染者数が増加しているとの報告もあります。しかし、その陽性者の大半は軽症か無症状の若者です。若者は体力があり、ほとんどは軽症や無症状で収まりますが、高齢者や持病のある方に感染すると重症化リスクが高くなります。そのため、高齢者を優先的にワクチン接種をしているのです。
その後順次各年齢層の国民にもワクチン接種がされますが、高齢者へのワクチン接種が一通り済めば重症化リスクはかなり抑えることができるでしょう。陽性者が増えても、風邪と同じような症状で済めば、医療崩壊のリスクも消え行動自粛を求める必要はなくなります。その日が来るまであと数箇月です。その日が来るまで正しく恐れ、立ち向かいましょう。
樋のひと雫
-ボリビア残照-
羅生門の樋
前回は「ボリビア残照」としたのですが,いつになったら帰れるものやら。このコロナ禍で随分と自身の視野が狭くなった気がします。なんせ家と散歩に行く近所の公園が全てなのですから。
前回はボリビアの大統領選を書きましたが,原稿の締め切りの都合で紙面が出た時には既に決着していました。結果は何と市民によって追放された前大統領の後継者のルイス・アルセが当選しました。それも予想に反して,初回で53%の票を獲得し圧勝の様相です。今回の選挙が白人で親米派のメサ元大統領との一騎打ちだったことから,白人対原住民の構図も浮かび上がりますが,どうもこれはステレオタイプのマスコミ分析に聞こえます。「普通なら,メサやろ!」とツッコミたくもなりますが,ボリビア市民が持っている心情的反米意識とでも云える意識の深層に根差したものが関係しているように思えます。豊かさと自由に象徴されるアメリカへの羨望と現実の裏庭支配,この落差が人々の反感を買います。そして,この心の渇望が今回も投票の選択肢に影響を与えたのではないかと思えます。グアテマラやホンジュラスのような中米では米国への難民キャラバンという直接的な行動になりますが,南米は歩けるほど近くではありません。
ところで,前大統領のエボ・モラーレスがボリビアを追放されたのは,多選を禁じた憲法を無視して選挙に出馬した上に,選挙結果を不正に操作したことが発端でした。多くの市民が反エボの街頭行動に打って出て,本人曰く「メキシコへの政治亡命」に追い込まれることになりました。背景には,エボの出身母体であったアイマラ族の牙城であるエルアルト市民の反対運動が大きかったと云えます。随分前になりますが,ガソリン代値上げを図った時に怒ったエルアルトの住民が街頭デモで,エボの肖像画を焼き捨てるということがありました。ショックを受けた彼は2日後に値上げを諦め,国民に陳謝しています。エルアルトは此処30年ほどの間,国政を揺るがす暴動には必ずキーとなる都市です。
また,警察や軍がエボに対して辞職勧告を突き付けた時には,ベネズエラやアルゼンチンなどの反米左派の国々は右翼革命だと非難しましたが,未だ彼は「軍隊,何するものど」という気でいたかも知れません。これは余り知られていませんが,ボリビアには「ポンチョ・ロホ(赤いポンチョ)」と云われるアイマラ族の私設軍隊とでも呼べる武装組織があります。歴史的なものもあり警察や軍も一目置いています。民族的な対立や政変の際には必ず動いてきました。恐らく,彼らの支持があれば軍を抑えられると考えていたのではなかったでしょうか。しかし,今回は動かなかった。自らの出身部族からの支持が無いことが,メキシコ,キューバ,アルゼンチンへと放浪の旅に向かわせたのでしょう。
ルイス新大統領はMASの中では,中産階級出身者ということで余り人気が無いと言われていました。また,英国で教育を受け中央銀行で働いていたとも聞いています。恐らくメスチーソと呼ばれる混血系の出身でしょうから,前大統領のように必要以上に革命色を打ち出すことはないだろうと思います。「今回の選挙は社会主義の勝利だ」と叫んでいるのはブエノスに居たエボだけかも知れません。今回の選挙では多くの友人もメサ元大統領が有利だと言っていました。彼らの予想を覆したのは若者層の投票動向です。初代MASの大統領を追放したのも街頭に繰り出した若者層でした。彼らが描く国の未来とはどのようなものなのか,聞くのが今から楽しみです。