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第7号

1996年04月08日発行

今、政治家に求められるもの
京都市長選挙を振り返って

京都府議会議員西田昌司

 2月25日に施行されました京都市長選挙におきましては、皆様方に多大のご協力ご支援を賜りまして、誠に有難うございました。お陰をもちまして、私達が推薦をしておりました、桝本頼兼さんが新市長になることができました。しかし、その内容は、共産党の推薦する候補者とわずか4000票余りという薄氷を渡る思いの勝利でした。私はその原因について分析と反省をしなければならないと思います。

私は大きく2つの原因があると思っています。1つは、自民党はじめ市長与党の相乗り体制に対する批判、もう1つは住専問題の影響があると思っています。

 第一点目の問題は、船橋・今川市長の時代には、共産党をも含む、オール与党体制の中で市政が進められてきたことへの不満感や今、国会では住専問題で与野党が対決しているにもかかわらず、京都で手を握っているという不信感が、有権者の皆様にはあったと思います。そして何よりも、与党対共産党という、選択肢の少なさが、多くの府民にしらけムードを持たらせたと考えております。

 京都の場合は他都市に比べて、共産党が非常に強いという事情はあるものの、政党の使命として、地方議会においても、もう少し政党色を出して、有権者の皆様に選択をして頂ける土壌を作っていくべきだと思っております。

 第二点目の問題については、本来京都の21世紀のリーダーを選ぶ選挙であるのに、住専問題の是非を問う国民投票であるかのような共産党の選挙戦術に乗せられてしまったことが考えられます。しかし、私たち自民党も、もう少し真正面からこの問題を市民に訴えるべきではなかったかと反省しております。

 住専問題につきましては、次のページに私の考えをまとめさせて頂きましたが、今回の市長選挙を振り返って私が一番痛感したことは、「政治家が有権者に日頃から、概策や考えを訴えていないがために、政治への判断材料をなくし、ひいては関心もなくなってしまう」ということです。

 政治家の使命は、京都や日本の将来を見据えた政策提言を行い、議論をしていく材料、即ち指針を示すことにあると思います。目先の問題ばかりを論議していては将来に対する指針を提示できないばかりか、有権者の皆様に政策の違いを判断して頂くこともできません。また昨今の住専問題のようにマスコミ調の感情的な議論だけでは、有権者の皆様に日本の国の将来の姿から現在の問題を見つめるという政策提言はできません。

 選挙の時だけでなく、日頃から自らを磨きその考えを常に皆様に訴えていくことの大切さを今更ながら痛感致しました。

 今年は1月から各学区でミニ懇談会をお願いし、毎朝、宗教法人法の問題から最近では、住専問題に対する私の考え方を訴える街頭遊説も続けております。これからも地道な日常の積み重ねを大切にしてゆきたいと考えております。

非常事態の日本
住専問題の本質

住尋問題については大きく、2つの問題点が指摘されております。

まず第一点目はバブルの発生崩壊の責任はどこにあるのか、借手責任、貸手責任の明確化など原因と責任の徹底糾明ということ。

第二点目は、6850億円という税金を何故投入しなければならないのかということでありましょう。

 第一点日の指摘については、私も全く同感であります。国会の参考人質問を見ていても、住専から多額の借入をし、焦げつかせている人物が「我々の取引に第三者が口を出すな」という発言をしたり、自分自身がかつて大蔵省のOBであった住専の社長が「責任は国にある」ということを平然と発言したりしている様子を見ていると、その思いは益々強いものとなります。

法律を改正してでも、逆さにして鼻血も出なくなるまで徹底的に債権を回収して、絶対に借得を許してはなりません。そして、貸手責任、借手責任を明確にしなければなりません。

二点目の税金投入の問題には、世論の大きな反対の声があると報道されております。バブル期にしこたま儲けて、バブル崩壊後、損失が出たからといって民間会社の損失の補填を何故国がみなければならないのかということが、述べられています。私もこれについても全く同感であります。個別の企業の問題としてとらえるなら税金投入の根拠は無いと思います。

しかし、問題は今回の税金投入は個別の企業の救済を意味するものでないということです。住専会社は全てつぶしてしまいます。そして、残った不良債権を確実に回収する為に、警察や国税出身者の方にご協力頂いて、別会社を作るのです。従って決して住専会社や損失を出した借手を救済するものではありません。

住専問題を語る上で一番肝心なことは、今の日本の経済の状態は、「非常事態」であるということを認識しているかどうかということです。

「家に火がついた」「さあ皆で火を消そう」と言っている時に「燃えているのは誰の家だ」「誰が火をつけたのか」と騒ぎたてるだけでは、家は全焼してしまいます。火事の時、一番にしなければならないことは「まず、皆で火を消す」こと以外ありません。そして、騒ぎたてているだけの野次馬を鎮め、皆で協力して火を消すことがリーダーの役割でしょう。今の日本の経済はまさにこの様な状態なのです。そしてそのことを知らないのは私達日本人だけなのです。

岡目入目、今、ジャパンプレミアムと言って、海外の投資家が、日本にお金を貸す場合は、通常の利息より高い利息を要求するようです。つまり、海外の目からは「日本は危ない」と思われているのです。もし、公的資金を投入しない為に金融機関が倒産したら、取り付けさわぎが発生したら、文字通り日本の経済はつぶれてしまいます。昭和の初めの金融恐慌や、オイルショックの時のトイレットペーパー騎動も、ほんのちょっとしたことがきっかけでパニックが発生したということを忘れてはなりません。公的資金の投入はこうした最悪の状態を避ける為であり、政府が金融枚関は倒産させないということを内外に保障し、表明することを意味するものなのです。

新進党の国会議員は、ピケをはって国会の開催を妨害し、言論の場であるはずの国会をじゅうりんしてきました。しかしその彼らでさえ「公的資金投入」以外に、日本の経済を混乱させない方法を提案できないのが現実であります。このことは、まさに火事場で騒ぐだけの無責任な野次馬にも劣る行為であります。かつて、東京の青島知事が選挙の際、「東京協和」「安全」の二つの信用組合の損失処理に都民の税金は使わないということを掲げて当選されました。しかし当選後青島知事は、二つの信用組合を守るのではなく、都民の生活を守るためには300億の税金を投入する以外ないとして公約を破棄されました。「無責任男」でならした青島知事でさえ、都民の生活を守るために公的資金導入を決意されたのです。まともな代替案なしに、公的資金投入を反対するだけの新進党は一体このことをどの様に考えているのでしょう。皆様の賢明なご判断をお願い致します。

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