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第67号

2011年07月07日発行

菅内閣は万死に値する

参議院議員西田昌司

最低限のモラルすらない

菅内閣が発足して1年が経ちますが、彼らはこの間何をしてきたのでしょうか。2年前、政権交代で鳩山政権が誕生しました。選挙の際、様々な事をマニフェストに掲げ、国民の高い期待の中で発足したにも関わらず、一月も経たないうちから躓き始めていました。普天間問題はその典型です。出鱈目発言を繰り返す鳩山総理でしたが、最後はその自らの発言の責任を取る形で辞任されました。ところが、菅総理にはこうした責任感すら持ち合わせていないようです。鳩山前総理がまともに見えるくらいです。
鳩山内閣の後をうけて、菅内閣が発足した当初、菅総理が訴えたのは、消費税増税でした。そして次は、TPP、税と社会保障の一体改革、大連立構想など、次から次へと思いつきの発言を繰り返し、どれをとっても何一つ成果は上がっていません。
 菅総理の頭の中にあるのは、それらの政策の具体的中身ではなく、政権の支持率アップでしかないのです。自らの不用意な発言が、国民の不信を煽り支持率が低下する。すると、次の関心を引く課題を見つけて、何ら具体的検討もないうちに思いつきで発言する。この繰り返しの中で起こったのが、あの大震災だったのです。既に震災前の時点で政権は機能していなかったのです。

震災復旧、復興の遅れは民主党の政治主導にある

西田昌司国政報告会2011を開催しました。
当日は会場一杯にご参加を賜り、誠にありがとうございました

そんな中で、M9.0という未曾有の大震災が東日本を襲いました。本来、政権の担当能力が無い人に、震災対応が出来るはずもないのですが、野党である我々には、政治的対決を控え政府の対応を見守ること以外ありませんでした。しかし、結果は無惨なものでした。本来、震災復旧の仕事は行政府が主体的に行うものです。つまり、各省庁が、積極的に対応すべきものです。その中で、現行の法制では対応出来ない問題や、必要な予算については国会の中で議論が必要となるのです。政府と国会とはあるべき仕事が違うのです。
震災復旧が進まないことから、政治は一体何をやっているのだ、という発言をされる方がいます。確かに、気持ちとしては私も全く同感です。しかし、実際は違うのです。何故なら復旧の遅れの根本的原因は、行政の停滞にあるからです。そして、その原因は民主党の掲げる「政治主導」という愚策にあるのです。
 行政府は本来、自律的組織です。つまり、大臣が居なくても機能を果たせる仕組みになっているのです。それぞれの部署で、必要な政策を自律的に行うことができるのです。そして大臣の判断を得なければならないものについてだけ、報告すればそれで良いのです。ところが民主党政権の下では、あらゆることを一々報告せねばなりません。これでは行政の停滞を招くのも当然です。
また、震災の対応も「責任は俺がとるから、必要な政策を思い切りやれ」、今までの自民党政権なら、そうしてきたでしょう。ところが、これが菅内閣では、「本当にそれでいいのか、失敗したら責任をとってもらうからな」ということになります。これでは役人は働けませんし、必要な情報も大臣に届きません。復旧の遅れは、民主党のこうした姿勢にあるのです。

震災復旧だけでなく列島強靭化が必要

今回の大震災の復興には、多額の資金が必要なのは誰の目にも明らかです。京都大学の藤井聡教授のお話によると、5年間で100兆円規模の予算が必要だとも言われています。また、これから日本列島のあらゆる地域で大地震が予想されています。特に、藤井教授の研究によると過去二千年間の東日本太平洋側のM8以上の地震4例中4例とも首都直下型地震と連動(10年以内)し、4例中3例が東海・南海・東南海地震と連動(18年以内)しているということが明らかになりました。これに早急に対応しないと日本国家の存続そのものが、危機にさらされることになります。これに備える為には、水道・電気・ガスなどのライフラインの強化、耐震化、更に高速道路や鉄道網の整備、インフラの早期更新など列島強靭化が必要です。これにも10年間で100兆円くらいの投資が必要です。合わせるとこの10年間で200兆円という莫大な資金が必要になるのです。
この資金の調達には国債発行しかありません。税で賄うには余りにも巨額すぎます。そもそも、今後100年の日本復興のための投資ですから、我々の世代だけで負担する必要はなく、将来の国民と一緒に負担すべきものなのです。ただでさえ、公債残高が多いのにこんなに巨額な国債を返済できるのか、孫子の世代は借金のつけ回しで大増税になるという人がいます。しかし、心配は無用です。ちゃんと返済できるのです。そればかりか、この巨額の公共投資が日本をデフレから救い出し、活力を与える起爆剤になるのです。

公務員給与削減はデフレを招く

菅総理は、公務員給与を3年間10パーセント削減することを提案しています。それを復旧財源に当てるということですから、賛成をされる人もいるでしょう。しかし、これはそういう世論を意識してのパフォーマンスなのです。そもそも、自衛隊始め、不眠不休で復興の現場で働く彼らの給与を削減すること自体筋違いです。また、いくら削減しても復興財源には、ほど遠い金額しか得られません。真の目的は、公務員にスト権などの労働三権を与えることであり、今回の措置は、その前段階である労働協約締結権(労使の話し合いで給与を決めること)を与えることと引き換えにした労働組合との裏取引なのです。
公務員には、職務の公益性のため労働三権がありせん。その代わりに、人事院が民間給与と比較をして給与が保証されています。この制度を無視して人事院勧告もない中、給与の減額をすること自体が法律違反です。また、労働協約締結権を付与すれば組合は圧倒的力を持つことになり、国家は解体の危機に瀕します。
更に、国家公務員の給与を削減すれば、地方公務員にも当然波及し、それに連動して最終的には民間の給与も下がるのは自明の理です。国民全体の給与が下がれば消費が低迷し、デフレが更に加速します。震災前から言われていた喫緊の課題は、デフレ脱却であったはずです。公務員給与削減は経済の破綻を招く致命傷になるのです。

財政再建はGDPの増加が絶対条件

財政再建には税収の増加が必要です。そのために絶対に必要なことは増税ではなくGDP(国内総生産)の増加なのです。例えば、皆さんが借金をして家を買ったとしましょう。月給が三十万円の人が、二千万円で三十年返済のローンで住宅を買ったとしましょう。残業手当が少なくなった程度なら、生活を切り詰めて返済をすることもできるでしょう。しかし、毎年給与が下がり出したら、もう返済はできません。そもそも毎年、給与が下がるという前提で、誰が住宅を買うでしょうか。消費が冷え切ってしまうため、借金返済ができないだけでなく、経済は大破綻をきたすでしょう。給与削減とはこういう結果をもたらすものなのです。
今すべきは給与削減ではなく、増やすことなのです。毎年給与が増えれば、住宅ローンも難なく返せます。同じく、毎年GDPが増えれば国債も十分返せるのです。200兆円の公共事業投資は間違いなく日本経済に活力を与えます。現在の500兆円を下回っているGDPも30年後には、1000兆円になることも可能です。すると、税金も現在の倍の100兆円の税収が毎年国庫に入れることも可能となり、国債の返済も問題なくできるのです。勿論、社会保障などのために税制の改革は必要ですが、今すべきことは先ずデフレ脱却をして、GDPを増やすことなのです。

延命のための反原発解散

頑張れ日本!全国行動委員会京都府本部トーク・セッションに出席しました

全てが出鱈目な菅総理には、流石に与党民主党からも退陣を要求する声が出始めました。しかし、内閣不信任案は、鳩山前総理によれば、菅総理のペテンにより否決されてしまいました。
今や、与野党問わず、菅総理を支持する人は殆どいなくなっています。そんな中、国会の会期が70日延長されました。当初自民、公明、民主の幹事長は50日の延長で合意していましたが、菅総理が70日にこだわり、八月末まで延長されることになったのです。20日間伸ばしてもお盆にかかり、実際の審議日数は大して増えないのに何故菅総理はこだわったのか。それは、自らの政権の延命だけで無く、反原発を旗印に解散をして、政権の起死回生を図るためなのです。
九月になれば、被災地で延期されてきた地方選挙も実施できることになります。選挙は解散後40日以内の実施ですから、八月末まで会期を伸ばすことにより、九月の地方選挙に合わせて解散することが可能となるのです。そして、反原発を争点にして選挙を行えば、イタリアでの選挙の様に自分も勝つことができる、そうすれば長期政権も可能だ。かつて、小泉総理が、郵政解散で勝利したことを念頭に、そんな夢みたいなことを考えているのでしょう。
国民を舐めるのもいい加減にしていただきたい。そもそも、今回の原子力災害は、菅総理の初動体制の間違いが大きな原因と指摘されています。さらに、全てを東電の責任に押し付け、政府が責任ある対応をしないことから、終息に時間がかかっているのです。こうしたことを横に置き、突然の浜岡原発の停止要請です。これが引き金となり、いずれ日本中の原発が止まることになるでしょう。反原発をして自然エネルギーに変えるのもいいですが、それには数十年はかかります。
その間のエネルギーはどうするのか、全く見通しがついていません。この夏も節電だけでどう乗り切れるのでしょう。電力不足で職や命を失う人も出てきているのです。これは全て菅総理の責任なのです。菅総理は、反原発の前に反パフォーマンスをすべきです。そして、全ての責任をとって政治家を辞めること以外取るべき道は無いのです

樋のひと雫
-ボリビア通信-
羅城門の樋

ラパスの街かどのカフェで二人の老夫人に声をかけられました。「日本は落ち着きましたか」「ええ、ありがとう。再建に向けて頑張っています。」と答えましたが、これで良いのだろうかと疑問もよぎりました。昨夜も首相が「1.5次補正予算」と言ったというニュースを目にしたところでした。この「1.5と2次」の違いは何だろうと思った時に、先ほどの婦人達がツナミに始まって「フクシマはどうなった、放射能は大丈夫、農作物は?」矢継ぎ早の質問をして来ました。少しうんざりしながら、「今の日本は、放射能よりもっと暗い霧で覆われていますよ」と言って、「しまった」と思いましたが後の祭りでした。怪訝な顔の二人に1時間、即興の図と手ぶりで日本の政局について講義をする羽目になりました。お陰でコーヒーは冷たくなり、もう一杯頼むことに。
 説明していてふと気付きました。今の日本に政治はあるのかと。こちらでは「政治(politica)」即ち「統治(gobernar)」です。(政治状況situacion politicaという言葉はあっても、日本の政局とは少し事情が違います。)そのため、ガソリンの値段まで大統領令(decreto)で決まります(尤も、ストで2日後には取り消すこともありますが‥‥)。当然、良し悪しは別にして、国情の説明がマスコミを通してなされます。少なくとも国民に向けた説明と言葉の責任を負います。日本の首相のように「一定の目途」と言って、この期間を誤魔化すなどという姑息な「言葉の遊び」は見られません。
 外から見ていると、今の日本には政治と政局の境界が見え難くなっているように思えます。「辞める」と言った人間と将来の枠組みや条約を話し合う国はないでしょう。統治能力を喪った首相が何を言っても、それは政策ではなく政局の言葉遊びにしか見えません。この災害が国難であるなら、日本の再生に向けた真の言葉=国策を提示することが統治者の責任であると思うのですが。空虚な言葉を投げ合うのではなく、日本の将来を討議する統治能力のある政治家の声が聞きたいものです。

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