アベノミクスで景気回復? 勝って兜の緒を締めよ
安倍総理が掲げるアベノミクスの期待により株価が上昇し、リーマンショック以前の水準にようやく回復しました。また、為替は95円台になり、円高も解消しつつあります。しかし、実際にはまだ予算も法律も執行されてはいません。まさに、安倍政権に寄せる期待が景気回復の原動力になっているのです。
ただし、それは、民主党政権への過大な期待の結果もたらされた、失望の大きさによるものであると、認識しておかなくてはなりません。現実の経済が回復しなければ、国民の期待は失望へと変わり、怒りとなって戻ってくることを考えると、勝って兜の緒を締める謙虚さと慎重さが必要です。
アベノミクスはアソノミクス
ビートたけしのTVタックル~春の3時間スペシャル~に出演しました
安倍政権が最初に取り組まねばならないのは、何と言ってもデフレ対策です。私はこうしたことを所管する参議院財政金融委員会の理事を務めていますが、そこで麻生財務大臣にデフレ対策についての所見を伺いました。麻生大臣は、金融緩和と財政出動と民間投資の三本の矢の必要性を説明されました。しかし、これは麻生大臣が総理の頃に行ったリーマンショックに対する景気対策そのものです。これがリーマンショック後の経済を下支えしたのですが、民主党の事業仕分けにより潰されてしまい、デフレに歯止めがかからなくなったのです。従って、アベノミクスと呼ばれているものは、実はアソノミクスではないかと私は考えています。
では、何故もっと早くこうした政策が自民党政権時代にできなかったのでしょうか。私のこの質問に対し麻生大臣は、実は小泉政権の時代にも同じことを提案していたが当時はそれが認められなかった旨を述べられました。率直に自民党政権の政策の誤りを認められた訳です。
日銀の誤りを認めた黒田日銀総裁
白川総裁に代わり新しく日銀総裁になられた黒田東彦氏も参議院財政金融委員会で、今から思えば、2000年、2006年に量的緩和を止めたのは早過ぎた、と率直に誤りを認められました。その上で、安倍政権の掲げる2%の物価上昇になるまで量的にも質的にも金融緩和を続けると明言されました。このように、麻生大臣、黒田総裁とも過去の政策の誤りを認めた上で、デフレ対策を徹底的に行うことを約束されたのです。
まさに、我が意を得たりです。かねてから、私はこの20年間の自民党の構造改革路線には反対をしてきました。そして、下野してからは特に、その総括をすべきと主張してきましたが、少なくともこのお二人はそうした思いを持っておられるということです。
政治家は自省が必要
参議院予算委員会にて質問
人間は誤りを犯すものです。そのことは誰でも知っています。しかし、立場が大きくなればなる程、自らの過ちを認められなくなります。特に政治の世界では尚更です。自ら行った政策の誤りを認めれば、その責任を追求されます。それを避けるためには、誤りを認める訳にはいかないのです。 役人の世界も同じです。役人はその背中に省庁を背負っています。その組織を守るためにも政治家以上に誤りを認めたがりません。
しかし、本当に背負わなければならないのは省庁ではなく、国そのものであるはずです。自分自身だけでなく、時には組織や先人の立場をなくすことがあっても、その誤りを認めなければ国家が滅んでしまうことになるのです。
こうした中、麻生大臣や黒田総裁の発言は先の過ちを認めるものであり、大いに評価したいと思います。それは、安倍総理にも共通する姿勢で、第一次安倍政権での失敗を繰り返すまいという決意が、政権運営に現れていると思います。それが、高支持率に繋がっているのでしょう。
TPPは国内空洞化を招く
私はTPPに反対しています。その理由は、そもそもTPPの目指す自由貿易をすれば、先進国は雇用の空洞化を招き、国民の所得が減るからです。昭和の時代の自由貿易は、日本で作ったモノを輸出することが主流でした。輸出が増える程企業は儲かり、雇用が増えるため、国民も豊かになり、外貨も稼げて国も富むことになりました。ところが、平成の自由貿易ではこうはなりません。平成の自由貿易は、モノではなくモノを作る製造設備そのものを輸出しているのです。そのため、海外でモノが売れてもそれは、海外生産したモノが売れているにすぎないのです。海外生産を増やした結果、企業の生産量は飛躍的に増大し、利益も増えました。しかし、製造拠点が海外に移転した結果、国内での雇用は減り、正規雇用が減りますから給与も減ります。国全体としては、海外からの配当が入りますから経常収支の黒字は増えます。しかし、国内の雇用が減り、国民の所得も減るため、GDPは減る可能性があります。これが国内空洞化です。
TPPは企業の論理
国内が空洞化するのは日本だけではありません。TPPを始め、極端な自由化を要求しているアメリカもその例外ではないのです。アメリカンドリームとは、一所懸命働けば、家を建て家庭を持ち、大きな車に乗り、週末は家族とホームパーティーを楽しむという中産階級の生活を誰もができるということです。ところが、アメリカではレーガン時代から始まった規制緩和政策のお陰で貧富の差が拡大し、中産階級が少なくなってしまったのです。 規制緩和の結果、製造業は日本などのアジア勢に敗退し、ウォール街の金融業界が支配する国になってしまったのです。中産階級の利益の代弁者として、脱ウォール街を唱えて当選したオバマ大統領も、今やウォール街の論理にしっかり取り込まれています。そうした企業の勢力を背景に、日本のTPPへの参加が要求されているのです。正に、企業の論理の代弁者としてオバマ大統領は日本に要求しているのです。
TPPはこれからも議論が必要
TPPについて、安倍総理は交渉参加を表明されました。しかし、自民党のTPP対策委員会では、TPPで守るべき国益と懸念される問題点について総理に報告をし、安倍総理もTPP参加交渉の中でこうした国益を守り抜く旨の決意を表明されました。日本の交渉参加については参加国の承認が必要で、実際の交渉は参議院選後になるでしょう。これから、この交渉の推移をしっかり注視していかねばなりません。
防衛力強化を急げ
中国は経済力で既に日本を追い抜き、やがてアメリカをも凌ぐ国となるでしょう。それに伴い軍事費も増大し続け、日本の安全保障にとっても大きな懸念材料です。安倍総理がTPPの交渉参加を決断した背景には、こうした状況の中で日米関係を重視されたのでしょう。 しかし、今後アメリカは膨張する中国を押さえ込むのではなく、取り込むことを選択する可能性があります。それは大東亜戦争の事例が示しています。当時アメリカが、その市場の大きさに目が眩み、日本より中国を選択したことが、日米開戦に繋がって行くのです。結局、その中国は毛沢東の共産党に占領され、アメリカは何も得ることができなかったのです。アメリカにとっても苦い経験であるはずですが、私たちも、アメリカ頼みの安全保障だけでは国を守れないことを考えるべきです。安倍総理は防衛力の増強を掲げておられますが、そのためには、集団的自衛権の行使を始め、今までとは次元の違う安全保障政策を行う必要があります。
日本の自立を阻むもの
自民党大会にて安倍総裁と握手
日本が防衛力を増強することにより、アメリカは日本での駐留経費を減らすことができます。日本の財政負担は増えますが、これは独立国としては当然の負担です。むしろ、それを今までしてこなかったことが問題なのです。また、防衛力の増強にはアメリカから兵器の輸入も必要になるでしょう。軍事産業はアメリカの基幹産業ですから、これにより、アメリカは雇用を伸ばすことができます。こうしたことは、日米両国にとってもお互いにメリットがあるはずです。
ところが、これに反対する国があるのです。まず、中国や韓国、北朝鮮が反対するでしょう。彼らは、かつて日本に事実上支配されてきたことを引き合いに出し、また軍事力で侵略するのかと大反対をするでしょう。それは、彼らからすれば当然のことでしょう。しかし、日本にそんな意思があるはずも有りません。自衛はどこの国にも当然に許された権利です。それを否定する権利はどの国にもないのです。
しかし、一番反対するのはこうした国ではなく、日本人自身ではないでしょうか。マスコミは憲法違反だと徹底的に反対するでしょう。
一方、アメリカも日本の自立を望まないとしたらどうでしょう。日本を自国の影響力の下に置くことがアメリカの利益と考えれば、そういうことになるでしょう。事実、そのために占領中にアメリカが日本にあの憲法を与えたのです。こう考えると、日本の真の自立にはまだまだ時間がかかりそうです。
参議院の安定多数が絶対に必要
ロケットスタートに成功した安倍政権ですが、まだまだ難問山積です。これらを一つひとつ解決してゆくためには、衆参両院で多数を獲得し、政権を安定させる必要があります。
私も、安倍総理を支え、国難を乗り切るために二期目を目指して全力で頑張る覚悟です。今後とも、ご支援をよろしくお願い申し上げます。
樋のひと雫
-本音と建前・理想と現実-
羅生門の樋
3月初旬にベネズエラのウゴ・チャベス大統領が死去しました。日本では馴染みが薄いかも知れませんが、中南米では今後の政治の行方を左右する一大事です。彼は経済破綻国家キューバを初め、余り強固とは言えない経済状況の中南米反米左派政権の最大のパトロンであり、自国の石油収益を惜しげもなくこれらの国々に与え続けました。我がボリビアもエボ・モラーレス大統領が盟主と仰ぎ、経済援助や政治上の指導も受けていました。
自国では多数の貧困層に政権基盤を置き、かなりあざといこともやっています。ゴルフは富裕層のものと云うことで、ゴルフ場を潰して貧困者用のアパートを建ててもいます。ボリビアでも同じことが起こるのではと、ラパスのゴルファーの間では随分話題にもなりました。
昨今では、各国の左派政権が経済的に行き詰まり、自国通貨の保護に躍起になっています。例えば、アルゼンチンではドル不足から輸入品の価格が高騰しています。ドル建て預金も出来ません。なのに、ブエノスアイレスに出かけようとした時に、現金(ドル)でホテルを予約しようとしたら、代理店で「ドル送金が出来ないから」と断られました。また、ボリビアでは最近になって、銀行ではドルからボリビアーノ(ボリビアの通貨)に換金してくれません。「国民以外はドルを換金することは出来ません」と断られます。観光に力を入れていると云うのに、ドルが使えない。抜け道がありました。ホテルのボーイにチップを渡して、銀行の窓口に同行してもらい換金を依頼します。これって国とグルになった小遣い稼ぎ、と思わずツッコミたくなります。
建前と理想の南米型左派政権は最大のパトロンを喪って、今後はどのような通貨政策を採るのでしょう。ベネズエラの国民は、自分達の財産(石油収益)が他国の政権維持のために使われることに、何時まで我慢できるのでしょう。難しいところです。各国は現在の為替レートを維持するために随分無理をしていますが、その反動が何時現れるのか。怖いところです。3千パーセントと言われたインフレ時代は、つい30年ほど前のことでした。
チャベスが夢見た南米独立の英雄シモン・ボリーバルの理想が蘇るのか、世界通貨ドルとの争いに敗れるのか。自国資源を国有化するナショナリズムが勝つのか。悩ましいところです。この様子、どこか日本のTPPやEPA、RCEPの問題と似ていませんか。世界諸国との貿易関税の壁をなくしたら、YENもなくなっていたなんて、悪夢です。