政府の赤字は民間の貯蓄の増加
参議院本会議での岸田総理への代表質問はYouTube西田昌司チャンネルでご覧いただけます。
この3年間、コロナの感染対策と経済の下支えのために、莫大な予算が組まれてきました。通常の1年間の予算の倍額が使われたと言っていいでしょう。そして、その財源は国債の発行に依存しています。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮の度重なるミサイル発射や中国の海洋進出など、わが国は戦後最大の安全保障上の危機を迎えています。今まで防衛費はGDPの1%以内が基準となっていましたが、来年度以降はこれをNATO諸国並みの2%に倍増すべきだという議論が進んでいます。
こうした事態を受け前財務事務次官などは、「このままでは財政破綻する」と喧伝していましたが、ハイパーインフレの発生も、金利の暴騰も、その兆候すらありません。日米金利差の拡大により一時は円安に大きく振れましたが、今は比較的落ち着いています。これは如何ともし難い事実です。
そもそも国債発行は、予算執行を通じて、民間側の預金残高を増やします。これは理屈ではなく、事実としてそうなっています。このことを岸田総理も私の代表質問で認められています。
国債発行は事実上政府による通貨発行ですから、予算を執行すればそれが民間側に供給されるのは当然の理屈なのです。通貨発行権は、中央銀行である日銀が持っていると教わっています。確かに、日銀は民間銀行から国債を買い取ることにより、民間銀行に通貨を供給していますが、銀行にいくら通貨を供給しても、民間企業が借り入れを増やさなければ民間企業にはお金は供給されないのです。
この10年、日銀は国債を買い取ることにより銀行に通貨を供給してきましたが、民間の借入金残高が増えなかったため、民間企業への通貨供給は増えなかったのです。これはアベノミクスの誤算です。しかし、コロナ禍による財政出動の大幅な増加により民間部門にお金が供給されました。特にこの3年間、コロナ禍にもかかわらず毎年税収が増加したのは、国債発行による財政出動の大幅な増加が通貨発行の増加となり、民間企業の利益を増加させたためです。
国債の償還資金は税ではない
これは財務大臣も認めたことですが、そもそも国債の償還は税金ではなく、新たな国債を発行して得たお金で借り換えています。このことも如何ともし難い事実です。国債発行による財政出動が民間への通貨供給なのですから、税金の徴収は発行した通貨の回収です。この回収した通貨を再び財政出動すれば、民間にまた通貨が供給されますから、徴税による通貨回収をしても民間の通貨量は変わりません。しかし、徴税により回収した通貨を財政出動せず国債の償還に充てて国債残高を減らせば、その分民間に供給された通貨量は減ることになります。
つまり、国債発行による財政出動は通貨供給であり、税金の徴収は通貨回収なのですから、その回収した税金を財政出動すれば、回収した通貨が再び民間に戻り、民間の通貨量は変わりません。しかし、その回収した税金で国債残高を減らせば、民間の通貨量はその分減ると言うことです。
税金は財源ではなく通貨の供給量を調節する道具
つまり、税金は予算の財源というよりも民間の通貨量を調整する道具なのです。予算の財源は国債発行をすればいくらでも出来るのです。しかし、税金がなければ、通貨供給量が増えるばかりで回収ができませんから、経済は一方的にインフレになります。また、税金がなければ、供給した通貨が一箇所に集中し格差や社会の分断が生じます。したがって、財源は国債発行でできるから税金をなくせという事は有り得ないのです。大事な事は、税金と国債発行のバランスです。実体経済の状況を踏まえ、そのバランスを図ることが大切なのです。
税金は財源では無いから、国債発行でいくら財政出動しても良いというのも間違いですが、税収の範囲内でしか予算を執行をしてはならないというプライマリーバランス黒字化論もまた大間違いなのです。大切なことは、その国の経済の状況がどうなっているかなのです。
日銀保有国債の償還や利払いの国庫への影響
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また、国債の利払い費は政府の負担ですが、現在、国債残高の半分近くは日本銀行が保有していますから、利払い費の半分は日銀に支払われることになります。日銀法により、経費を差し引いた残りは国庫に納入することになっています。このことから、少なくとも日銀が保有する国債については、国債の償還も利払いも事実上、国庫に影響を与えていないということになります。
黒田総裁は、物価上昇が継続的に2%になるまで国債を買い続けることを政府と政策協定しています。この方針が継続される限り、日銀の保有国債は増え続けることになりますが、国債の償還や利払いが財政に影響を与えることはありません。
プライマリーバランス黒字化目標がデフレの根本原因
以上のことを踏まえると、国債の残高が増えてもその償還や利払いで国家が破綻するということは到底考えられないということになります。それよりも、問題であるのは、国債の増加によって政府の負債は増え、片や民間の貯蓄が増えても、この民間側に回ったお金が使われていないことです。経済を活性化させるには、国が財政出動をして予算を膨らませることで、民間にお金を回すことも必要ですが、民間にはそのお金を使ってもらわなければなりません。そのためにはデフレ状況、先行き不安状況を払拭して、お金を投資できる環境をつくることが大切です。
そのために重要なことの一つは、日本の長期の投資計画を国が示すことです。残念ながら、この国の長期計画はバブル崩壊後、財政再建を理由に廃止されました。新幹線や高速道路などのインフラ整備の長期計画が示されて、これを10年で完成させるという事業が実行されるとなると、間違いなく民間投資は政府の計画に沿って拡大されることとなります。政府が予算措置した以上に、民間がお金を使い、経済の好循環、そして経済成長へと向かい出します。
問題は、国が長期の投資計画を示せなくなったのは何故かということです。本来、インフラ整備は財政法で認められている建設国債の発行で出来るはずです。しかし、プライマリーバランスの黒字化が閣議決定されて以降、赤字国債だけではなく、建設国債も抑制されてしまい、結果的に長期の投資計画が示されなくなり、デフレから脱却できない状況に陥りました。
私は亡くなった安倍元総理と一緒に、自民党に財政政策検討本部を作って様々な議論をしてきました。その結論は、プライマリーバランス(PB)の黒字化目標が日本の経済を縛っていった根本的な問題であったということです。安倍元総理がご存命ならば、必ず、PB黒字化目標の撤廃を岸田総理に要求していたはずです。安倍元総理の意志を継ぐためにもPB黒字化目標は撤廃させねばなりません。
民間企業の負債が20年以上増加していないのは日本だけ
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財務省は国債残高がGDPの2倍もあるのは日本だけであり、財政再建の必要性を訴えています。しかし、国債発行は民間部門への通貨供給であり、国債の償還や利払で財政が破綻することが無いということも事実です。問題は国債残高が他の国より多いということではなく、民間企業の負債がこの20数年全く増えていないことです。
本来、民間企業は投資をして事業を拡大するものです。ところが日本では、バブル崩壊後の不良債権処理を強行して以来、もう二度と銀行からお金を借りて投資するのは懲り懲りだというのが民間企業の本音です。さらに、この間、国際的な法人税の引き下げ合戦が繰り広げられました。その結果、住民税も合わせた法人の実効税率は、かつては5割を超えていたものが3割を切っています。
実効税率が5割を超えていた頃は、利益の半分も税金を払うぐらいなら、投資を前倒しして特別償却を増やすとか、決算ボーナスを従業員に支払うとか、そうした節税が結果的に消費や投資を増やすことになりました。しかし、実効税率が3割以下になるとそういう動機が経営者にはなくなっているのが現実です。こうしたことにより、日本の企業は内部留保が増え続き、負債より貯蓄が多い状態が続いています。本来、経済を牽引するはずの民間企業が投資をせずに、利益を溜め込み続けていることが異常なのです。
消費税をEUの付加価値税の様に第二法人税にすべし
実は、EUの付加価値税(VAT)は第二法人税になっています。企業の売上から仕入れを引いた粗利に税率を掛けた額を税として納めるという点では、日本の消費税と基本的には同じ仕組みです。違うのは、その額を消費者に転嫁することを義務付けていないことです。その結果、VATは日本の消費税と違い、企業の利益から納める第二法人税になっているのです。
日本では法人の7割が赤字法人で法人税を納めていません。しかし、法律によって法人格を認められ経済活動を認められている以上、VATをモデルにして赤字法人でも一定の負担をしてもらうべきというのが、元々消費税の立法目的であったのです。ところが、成立の過程での様々な議論の結果、レジでの外税方式が主流になり、また転嫁が義務付けられたためVATとは似て非なるものになっているのです。
一方で、EU のVATは第二法人税になり、法人税の引き下げをしても事実上の実効税率は5割を超える水準を維持しているのです。このため、日本の様に企業の内部利益が異常に増加することも有りませんし、民間企業の負債も増え投資も進んでいます。また、VATの税率を上げても、直ちに物価が上がり経済の足を引っ張るということも有りません。消費税もVATの様に第二法人税にすべきなのです。
瓦の独り言
「おせち料理」
羅城門の瓦
「コロナ禍で中くらいなりおらが春」
みなさん。新春あけましておめでとうございます。おせち料理を前に、一献傾けられる幸せを皆様方と共有したいと思っている瓦です。さて、おせち料理といえばデパートの見栄えのよい重箱入りがもてはやされており、各市町村のふるさと納税の返礼品にも「おせちのお重」が入っているとか。
おせち料理は歳神様をお祝するもので、かつて(?)は各家庭で年末に作られていたものです。中でも「祝い肴三種」はかかせないものですが、関東と関西、さらには京都では肴三種が少し異なっているようです。(諸説いろいろありますが)
関東:黒豆、数の子、ごまめ(田作り)
関西:黒豆、数の子、たたきごぼう
京都: 数の子、たたきごぼう、ごまめ
どれが正しいといった論議は抜きにして、それぞれに由諸があります。
【数の子】:卵の数が多く、ニシンは「二 親」に通じ、五穀豊穣と子孫繁栄を願ったもの。
【たたきごぼう】:豊作と息災を願い、ごぼうは地中に深く根を張ること運が向いてくる。
【ごまめ】:カタクチイワシを田の肥料としていため「田作り」ともいわれ、五穀豊穣を願った。
などがあり、元旦の朝には瓦の自宅ではこれら肴の由来を家族でわいわい言いながら確認して食べています。一つ一つの料理は火を通したり、燻製にしたり、あるいは酢漬にしたり、味を濃くして日持ちする料理が多いのです。これは歳神様を迎えてともに食事を行う正月の火を極力捉えて、また、家事から女性を三が日は解放するためといった目的もあったとか。
おせち料理の味付けは各家庭で微妙に異なっていますが、祖母から娘へ、そして孫へと繋いでいくもので、そこにはデパートの見栄えする「お重」が入ってくる余地はなかったはずです。核家族になっても年末には親元のおせちをお重に詰めてもらい元旦を迎えたものです。
古臭いと言われようが正月三が日は歳神様と食事をしている意識をもって、日本の、いや京都の正しいお正月のおせちの伝統を引き継いでいきたいと瓦は思っております。
この伝統を引き継ぐことは、「伝えよう。美しい精神と自然」をキャッチフレーズにしておられる西田昌司参議院議員も同じ思いではないか、と思っているのは瓦一人だけではないと思っています。
どうか2023年・卯年も瓦の独り言をよろしくお願いいたします。