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第78号

2014年04月25日発行

自衛権は主権国家として固有の権利である

参議院議員西田昌司

安全保障法制推進本部の設置

 安倍総理は、7年前の第一次内閣の時から戦後レジームからの脱却をスローガンとして掲げておられました。その意味は、戦後の占領時代に作られた、憲法を始めとする価値観や制度から脱却するということですが、同時にそれは、自分の国を自分で守ることを議論することさえタブーになっていた、戦後の政治体制に対して大きな疑問を投げかけるものでした。そのため、戦後の価値観を守ることが使命だと自認していたマスコミ各社に袋叩きにあい、支持率が瞬く間に低下し、結果的に辞任に追い込まれることとなりました。
しかし、今日、中国の経済力・軍事力の発展に伴い、領土的野心をむき出しにしてくる様子や北朝鮮の軍事的独裁体制を目の当たりにしてみると、危機感を覚える人も多いことでしょう。国民の誰もが今のままでは日本の国を守ることができないと感じ出しています。こうした中、第二次安倍内閣においては、経済の再生と同時に、外交安全保障の再生も大きな課題となっています。そこで昨年末の臨時国会においては、国家安全保障会議の設置と特定秘密保護法を成立させ、友好国と情報を緊密に交換しながら、常時、国家の安全保障について議論できる組織を作ることができました。しかし、これで国の安全保障が十分担えるわけではありません。結局一番の課題は憲法、特に9条に関わる問題を整理することなのです。

何故自衛隊は存在するのか

参議院予算委員会にて安倍総理にデフレ脱却を中心に質問をいたしました

 現行憲法の最大の矛盾は、武力放棄を規定しながらも自衛隊と言う実質的な軍隊を有していることです。自衛隊は当初は警察予備隊として昭和25年に発足しましたが、その原因は朝鮮戦争です。北朝鮮が韓国に侵攻してきたため、日本に駐留していた米軍の多くが朝鮮半島に派兵されることになりました。日本の治安を司る米軍を補完するために、GHQは日本に再軍備を要請したのです。当時は占領中ですから、GHQの指令には従わざるを得ません。つまり、軍事力の放棄も再軍備も日本の意思ではなくGHQの意思によりなされたものなのです。

巧妙なGHQの占領政策

 占領当初、GHQが目的としていたことは、日本の解体であり、非武装化です。そのための手段として日本国憲法が与えられたのです。しかし、一方で占領政策を円滑に行うには、日本人の自発的協力が必要です。日本を本当に解体するには皇室の廃止が必要ですが、それには大きな抵抗が伴い、多くの血を見ることは容易に想像できます。それを回避するために生まれたのが、日本人が自主的に改憲をしたという物語です。そのためには、皇室の継続を保障することは絶対的必要条件です。当初は、皇室の廃止もGHQは考えていたと言われていますが、結局、彼らも憲法の第1条に天皇を国民統合の象徴と書かざるを得なかったのです。しかし、この条文があるために日本人は明治憲法を自発的に改憲したということに納得してしまったとも言えます。

GHQの政策変更により変わった憲法解釈

テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」~安倍総理の描くニッポンのかたちとは~に出演いたしました

 ところが、GHQの占領政策は朝鮮戦争により大きく転換したのです。そして、それに伴って日本政府の自衛権についての憲法解釈も180度転換しました。
 第90帝国議会の衆議院帝国憲法改正案特別委員会(1946年6月26日)吉田茂内閣総理大臣答弁では、「戦争放棄に関する本案の規定は、直接には自衛権を否定はして居りませぬが、第9条第2項に於て一切の 軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も放棄したものであります。 従来、近年の戦争の多くは自衛権の名に於て戦われたのであります。満州事変然り、大東亜戦争然りであります」と自衛権すら完全に否定していました。
 ところが、朝鮮戦争が始まる1950年には次のような答弁に変わります。まずマッカーサー元帥が年頭の辞で「日本国憲法は自衛権を否定したものでは無い」と表明します。これを受けて吉田総理は1月の参議院本会議で「いやしくも国家である以上、独立を回復した以上は、自衛権はこれに伴って存するもの。安全保障もなく、自衛権も無いが如きの議論があるが、武力無しといえども自衛権はある」と180度内容が変わります。そしてその年の6月に朝鮮戦争が勃発、8月には警察予備隊が発足します。このようにアメリカの占領政策の変更を受けて、日本は憲法解釈を変更し、自衛隊を持つに至ったのです。

砂川裁判の判決 -自衛権は独立国として固有の権利であり、自衛隊は合憲-

 独立国に自衛権があるのは当然です。しかし、それを占領当初は憲法を盾に自衛権はないという解釈をしてきました。それが180度転換されたのですから、混乱が生じるのも無理はありません。こうした状況の中、1957年、米軍基地の中にデモ隊が乱入するという事件(砂川事件)が起きました。この事件の裁判により自衛権や安保条約の是非についての司法判断が出ました。1959年12月、最高裁は「憲法第9条は日本が主権国として持つ固有の自衛権を否定しておらず、…」という判決を出し、自衛隊は合憲とされることが確定したのです。
日本を軍事的に解体し、自衛権も放棄させるために作られた憲法でしたが、独立を果たした以上は、自衛権は固有の権利として認められるという解釈が合憲であることが確定したのです。憲法を解釈で変更するのは違法だという人がいます。しかし、それが違憲かどうかを判断するのは最終的には裁判所です。その最終判断はすでに50年以上前に合憲と確定しているのです。

個別的自衛権と集団的自衛権

総理公邸にて参院副幹事長と総理との懇談会に出席いたしました

 個別的自衛権とは、自国に対する他国からの武力攻撃に対して、自国を防衛するために必要な武力を行使する、国際法上の権利のことです。集団的自衛権とは、ある国が武力攻撃を受けた場合、これと密接な関係にある他国が共同して防衛にあたる権利であり、ともに国連憲章において主権国家に認められているものです。砂川裁判では個別的か集団的かという区別をせず、主権国家は固有の自衛権を持つと判断をしています。従って、主権国家の固有の権利として集団的自衛権を持っているのは自明のことです。
 問題は、今までに政府が、集団的自衛権は持っているが、それを行使することはできないと答弁をしてきたことです。このような意味不明の答弁をしてきたのは、主権国家の意味をまともに考えることを避けてきたためです。
 昭和27年のサンフランシスコ講和条約により日本は独立を回復し、昭和31年には国連にも加盟しているのですから、国際的にはその時から個別的自衛権も集団的自衛権も日本には認められているのです。
 しかし、敗戦のトラウマと占領政策により日本は、自分の国は自分で守るという主権国家としての当然の義務と権利を半ば放棄してきたのです。そのことはその当時の政府の答弁にも現れています。その結果、積極的に国を守ることを放棄して、アメリカに守ってもらうことの方が正しいという詭弁を弄してきたのです。

憲法は占領基本法であることを国民に伝える

 私はかねてから、現行憲法は無効であり、それは占領基本法に過ぎないということを主張してきました。それは占領時代には、日本国民の主権は認められておらず、実質的にGHQが占領目的の遂行のために作られたという事実を考えれば当然のことです。しかし、この事実がまだまだ国民に共有されていません。そもそも、未だにこの憲法が日本国民の手によって作られたと学校の現場では教え続けています。それは、政府が憲法問題の本質について整理してこなかったからです。その結果、憲法が規定する内容に違和感を覚えながらも、それを平和憲法として受け入れてきたために、憲法についてまともに議論すらできなかったのです。
 安倍総理は、日本の外交安全保障を強化するために、様々な改革に取り組んでおられます。しかし、それはまさに戦後の常識に異議を申し立てることです。それを国民に理解してもらうには、占領中に行われてきた事実をもう一度国民にじっくり説明する必要があります。勿論、それは一朝一夕にはいきませんが、諦めず説明して行くことが大切です。そして、多くの国民がそれを理解した時、日本の戦後は終わるのです。

樋のひと雫

羅生門の樋

 お昼のワイドショーを続けて見る機会がありました。これも毎日が日曜日になった故ですが。しかし、驚きました。テーマが北朝鮮問題や日韓・日中関係など、外交問題まで茶の間の話題になっていることです。つい先日まで居た南米にも、同じような番組はありましたが、内容は料理やゴシップ、ファッションばかりです。まあ、お国柄と言えばそれまでですが。こんなところにも、日本の教育水準の高さが窺えることに、変に感心をしました。
 番組を見ていて思ったのですが、日本はいつまで卑屈な姿を続ければいいのでしょうかね。習政権の安重根記念館建設や朴政権の告げ口外交にして、有効な手立てのないことは分かりますが、「遺憾の意」を表するだけでは、何か見ていて苛立ちを覚えます。日米韓三首脳の会談で、一国の首相の挨拶を無視する態度も、あれでよいのですかね。会談の窓口は開けていると言っても、手をこまねいているだけでは、事態は進みそうもありませんね。まあ、話し合いなんてものは、必要性を感じなければ出来るものではないでしょうが。出演している識者の多くは、もっと日本が努力すべきという論調ですが。別段話し合いの必要性を感じない相手に、何を努力するのでしょうね。話し合いなんてものは、互いの存在の必要性や利益の伸長があって初めて成り立つものでしょうから。必要や利益がなければ、話し合う気力も起きないでしょうね。
 ところで、世間を騒がせ始めた集団的自衛権ですが、解釈でどうにかなる問題でもないでしょう。ここはやはり、正論として憲法改正論議の中で深めるべき問題ではないですかね。それも、真摯に日本の五十年、百年先を見据えて、独立と尊厳を如何に守るかを考えたいものです。集団的自衛権を認めれば、すぐにでも戦争に出かけるようなマスコミの煽り論調もいい加減にして欲しいものです。それに、集団的自衛権を発動する事態(朝鮮半島の問題でしょうが)が起こっても、今の日本人の感情では、素直に韓国に同情して参戦できますかね。安倍首相の挨拶を馬鹿にしたような朴大統領の横顔を見た日本人にとって、我々の血を流してでも友情を守るという感情は起きないでしょう。ひょっとしたら、在日米軍の基地使用にも反対運動が起きるかも。なんせ、米軍が交戦するための基地使用には、日本の同意が必要なはずですから。もしも北朝鮮に、「拉致した日本人は全員送還します。詫び状も書きます」なんて言われたら、完全中立を支持しますよ、今の日本人の感情では。韓国の反日感情も高まっているそうですが、火を点け、油を注いでいるのは、我々から見ればお宅の方だと思うのですが。こんなことを、ワイドショーを見ながら思いました。

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