発端は異常な土地の値引き
国会での「森友学園問題 証人喚問」籠池理事長への質問
森友学園騒動は、今年の2月に朝日新聞が「森友学園が大阪の国有地を適正価格の1割で購入していた」と報道したことが発端です。財務省は、この報道を受け、売買価格を公開、「国有地9割引」について「埋設物の撤去・処理費用である8億円を控除した」と説明しました。しかし、あまりにも大きな値引きであるためその背景には政治家の圧力があったのではないかという疑惑が沸き起こったのです。そして、その小学校が元々安倍晋三記念小学校という名前であり、名誉校長が総理夫人であったことから、官邸からの圧力があったのではという騒ぎになったのです。
当初は私も、何故これ程値引きがされるのかについては疑念を持っていました。しかし、調べていくと、安倍総理始め、政府には全く問題がないことが判明しました。
土地取得の経緯
森友学園の小学校が建設されている国有地は、元々騒音対策として国が買い取った土地だったのですが、その後旅客機の技術の進歩で騒音が緩和されたため、不要になり売却されることになったものです。
国有地を売却する際には、先ず、地方公共団体など公益に関わるものが優先されます。そこで、平成25年6月から3カ月間、地元自治体である大阪府と豊中市に取得要望の有無が確認されましたが、両者からはその希望が無い旨の返答がありました。そんな中で、森友学園から買取の申し出があったのです。学校法人は公益団体として地方公共団体に準じて優先的に売却されるのですが、買取の申し出が一者だけであったため森友学園に売却されることになったのです。
森友学園は小学校の敷地として取得したいものの、手許不如意のため10年間の定期借地権を設定して土地を借り、10年後に買取をしたいということを申し出ました。ここから近畿財務局との交渉が始まり、その過程で、後にこの土地には大量のゴミが埋設されていることが判明します。
一方で森友学園は、平成26年10月に大阪府に小学校新設の認可申請書を提出します。大阪府の私学審議会の定例会が平成26年12月18日に開催されますが、ここでは森友学園に小学校を開設するだけの資力があるのかということが指摘され、複数の委員が疑問を呈しています。そのため、この時点では答申が保留されたのです。ところが、翌年の1月27日に私学審議会臨時会が開催され、条件付認可適当という決定がなされたのです。しかも、その条件は寄付金の状況を報告することなど形式的なもので実質的に条件と言えるものではありません。これを受けて森友学園と近畿財務局との間で平成27年5月29日に国有財産売買予約契約と国有財産有償貸付合意の契約が結ばれました。
土地の値下げはゴミが原因
森友学園の問題が注目されることになった原因は、国有地の異常な値引きです。約9億円の土地が8億円も値引きされたと聞けば、誰もが疑念を持ちます。しかし、その交渉の過程を調べていくと、減額が必ずしも異常ではない、むしろ国の損害を低く抑えるためには仕方がなかったということもわかります。
森友学園が近畿財務局と土地の賃貸交渉をしている矢先に、大量のゴミが埋設されていた事が判明します。森友学園が立て替えたゴミの処理費約1億3千万円を国が支払い、一旦解決するのですが、更に深層部からもゴミが出てきたため最終的には約8億円もの処理費を国が負担することになるのです。小学校の開設を当初は平成28年の4月としていたため、それに間に合う様に森友学園側でその処理を行うという事で、実際には8億円を支払うのではなく値引くことになるのです。この金額の妥当性については、私が予算委員会でも質問しましたが、民間事業者が行う場合の処理費と比べても問題ない金額である事が分かっています。
瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とは
籠池理事長の証人喚問での偽証についての記者会見
それよりも大事な事は、この値引きにより国側は国有地売却に関する瑕疵担保責任を免責されたという事です。瑕疵とは隠れた傷という意味ですが、ゴミの埋設など表面上では分からない隠れた傷が有った場合には、通常売り手側がその責任を負うことになります。これが瑕疵担保責任です。それが免責になったという事は今後もっと他に国側が責任を負うべき事態が発生しても国側はその責任を負わないという意味です。つまり、8億円の値引きで国側は今後一切の責任を免れたのです。それでも8億円は余りに大きいのではないかという方もおられるかもしれませんが、私は妥当であったと思います。
実は、豊中市の別の国有地の払い下げでゴミの埋設が原因で売却額の2倍のゴミの処理費が発生する事態がありました。元国有地で今は新関空会社が所有する土地を、給食センターを建設するため、およそ7億7,000万円で豊中市が購入したのですが、試掘調査で、地中から大量のコンクリート片などが見つかり、撤去に14億3,000万円の費用がかかることになったのです。
これを森友学園のケースに当てはめれば、瑕疵担保責任の免責を受けていなっかたならば、国側は売却額の2倍の18億円を払うことになりかねないということです。
問題はゴミの処理をしなかった森友学園にある
国側は瑕疵担保責任の免責の引き換えに8億円の値引きをしたのですから、本来、森友学園はゴミの処理をしなければなりません。森友学園は1億円で土地を購入したつもりですが、ゴミの処理をきちんとすれば8億円かかるはずで、結局土地の購入費は9億円になるのです。
ところが、森友学園はその処理をしなかったようです。私が予算委員会で公開した籠池夫人のメールにはゴミの処理費が3億5千万円かかるが、そのお金が無いという意味の記載があります。この事から、小学校の敷地の部分はゴミの処理をしたようですが、グランドの部分はそのまま放置していた事が窺えます。ゴミの処理費に莫大な資金がかかるという事で8億円も値引きさせておきながら、小学校開設の資金を節約するためゴミの処理は必要最低限に抑えていたという事でしょう。
小学校開設の認可は正しかったのか
以上の経緯からも国有地の値引きは妥当であり、少なくとも国側には瑕疵は無いという事が分かります。それよりも問題は、小学校開設の認可があまりにも早いということです。そもそも大阪では、幼稚園しか経営していない学校法人が借金をして小学校を設置することは禁じられていました。ところが、平成23年7月に森友学園から大阪府にこうした設置基準を緩和するよう要望が出されます。これを受けて翌年の4月に大阪府の私立学校設置基準が緩和されます。この規制緩和により、幼稚園にも小学校開設の道が開かれたのですが、実際に設置を希望したのは森友学園だけだったのです。
また、小学校の校舎の敷地を借地で賄うことは設置基準に反する行為であった事が、最近判明しました。上述した様に、認可適当と答申した時には土地は国から借りる前提でしたから、完全に設置基準に違反しています。ところが、いずれ買うことになっているから問題ないという見解を、最近大阪府が示しましたが本当に妥当でしょうか。
元々、幼稚園だけを経営する学校法人に借金で小学校を設置することを認めてこなかった理由は、経営基盤の安定した学校でなければ子供の教育を任せられないからです。ところが、森友学園はこの時、幼稚園の定員に対して5割くらいしか在園者がおらず、幼稚園の経営事態が危ぶまれていたのです。私学審議会の議事録にもその事が指摘されています。また、小学校を建てるには最低20億円から30億円は建設費が必要だと言われています。そのお金を用意できていたのでしょうか。小学校の建設を請け負った業者が総額約24億円のうち約20億円が未払いだとして提訴していることからも、必要な寄付金が集まっていなかったことは明白です。
大阪府議会で百条委員会を設置すべき
「故郷を支援する参議院の会」で安倍総理へ要望
この様な森友学園の財政状況は私学審議会でも危惧されていた事がその議事録からも確認できます。何故、条件付きとはいえ認可適当と答申したのでしょうか。また、その条件が本当に条件として正しかったのでしょうか。謎は膨らむばかりです。この解明には大阪府議会で強い調査権限を持つ百条委員会を設置する必要がありますが、維新と公明党の反対で未だに設置できていません。松井知事は国会の証人喚問に応ずると言っていますが、その前に自ら百条委員会を設置して説明責任を果たすべきなのです。私学審議会の担当者が処分されたと報じられていますが、それこそトカゲの尻尾切りでしょう。
森友学園の問題は、資金も無いのに小学校を建てるという無謀な計画こそが事の始まりです。普通なら、この計画を私学審議会に相談した段階で駄目出しがなされ、認可されることは無いでしょう。大阪府の対応や判断に瑕疵があった事は否めません。
視聴率重視で真実を報じないマスコミ
では何故、これほどまでに騒動になったのでしょうか。それこそマスコミの誘導があったからです。私が予算委員会でも指摘してきた上記のような事実は殆ど報じられる事は有りませんでした。真実を追求することより、視聴者の関心を引くため、殊更に政治家の関与があったはずだと煽り立てました。特に総理や昭恵夫人がこの件で関与する余地など全く無いにも拘らず、関係があるかの様な報道に終始しました。
確かに、籠池理事長夫妻の強力な個性や総理に寄付して貰ったという爆弾発言にマスコミが飛びつくのも分かります。しかし、そもそも総理の寄付の有無など問題の本質では有りません。更に、密室で人払いをして寄付をしたという証言など全く証拠にもなりません。実際、総理が森友学園に寄付すること自体、法的にも道徳的にも全く問題はありませんし、何故密室で渡さねばならないのでしょう。籠池理事長の証言は明らかに不自然なのです。
ワイドショーだけでなく、報道番組でさえも籠池理事長の一方的発言だけを報じるマスコミの姿勢は、公器としての使命を失ったというほかありません。報道のワイドショー化は自らの権威失墜になることをマスコミは知るべきです。
樋のひと雫
羅生門の樋
4月の初め、久しぶりに成田に着きました。エントランスでは満開の桜にではなく、「モリトモ…モリトモ…」というTVのアナウンサーの声に迎えられました。ネットのニュースで知っていましたが、ここまで日本で盛り上がっているとは思いませんでした。北アフリカで見ていたTVニュースは、イラクのモスルでの戦闘が朝から流れています。日本ではそのまま流れないような映像を見続け来た身には、ある種のカルチャーショックです。幼い子供が砲煙の中で横たわっている図は、「世界は広い」では済まされない肌寒さを感じさせます。
私の目には、大阪の一幼稚園の補助金の不正受給と学校建設の不正許可申請の問題に見えるのですが…。一国の総理大臣の去就を取り沙汰されるような問題に見ないのです。まあ、「妻や私が関係していたら…議員も辞めます」という質問を強く否定した言葉のみが脚光を浴びた結果でしょうが。この一言に飛びついた野党も「無関係を証明せよ」などと云う質問で、「強く伺わせる」などと自分の感想を修飾しながら、あたかも「疑惑」が存在するかのようなイメージを作り上げる。しかし、ディベートとしては面白いのですが、政治の場で論客として語る論理でしょうかね。
この問題で、党首論争を行うと蓮舫さんが云ったとか言わないとか。まあ、野田‐安倍論争で総選挙に至った再現を期待したのでしょうが、彼女の二重国籍問題ってケリが着いたのでしょうかね。何かあやふやなままで終わっていますよね。まあ、これも含めてやってみるのも面白いでしょう。ディベートのテーマは「疑惑と責任」というのが適当でしょうか。
「日本のマスコミは政治ではなく、政局を取材する」とは、よく耳にする言葉ですが、これなどはTVの視聴率も稼げるのではないでしょうか。
我々庶民の間には、どのような清廉な権力も永くその座に居れば腐敗するという考えが根底にはあります。「そう云えば長いよな」、「何か有るのでは」という漠然とした気持ちがあります。そのような勘繰りが土台に有って、イメージが形作られていく。このような構図が描けるのも「モリトモ問題」かも知れません。「忖度」という概念は日本人の精神に流れる優しさや奥ゆかしさを表現するものだったのですが、「媚へつらう」という意味に堕落したのが残念でたまりません。